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スーパーサイエンスキッズ
プロジェクト概要
小中学生を対象としたワークショップ&コンテスト、2005年12月スタート!!
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「スーパーサイエンスキッズ」アドバイザーからのメッセージ

「プログラミング能力を備えることは、現代を生き抜くための生活力を高めること」
杉並区立和田小学校元校長 法務省人権擁護委員 財団法人豊島修練会理事事業部長
横山正さん

2007年3月に杉並区立和田小学校長を退任し、現在は市区町村長が推薦し法務大臣が委嘱する人権擁護委員や、教育活動を幅広く支援する豊島修練会の理事事業部長を兼務する横山さんは、各学校や教育委員会の研修や福祉活動への支援などにも取り組むなど、校長時代をしのぐほど精力的に活躍されています。今回は、自らプログラミングスキルを持つ教育者として、長年子供たちへのSqueak教育に携わったご経験と、プログラミング教育の重要性について語っていただきました。

「LOGOより簡単に学べるSqueakの存在に強く惹かれた」

私とSqueakとの出会いは、2004年に「ALAN-Kプロジェクト」(*1)によるSqueakのワークショップを視察したのが最初でした。それは、同年3月に日本HPから杉並区へパソコンや周辺機器の大規模な寄贈が行われることが決まり、それらの有効な活用方法が区内の学校で検討されていた時期でした。

アプリケーションソフトウェアの使い方や、情報検索することにしか用いられていないコンピュータ教育の現状に懸念を感じていた私の脳裏には、LOGO(*2)などの教育用プログラムを活用した情報教育の理想形がありましたが、LOGOより簡単に学べるSqueakの存在は、強く私の興味を引きつけました。

Squeakなら、プログラミングを通して子供たちの基礎的な創造性や企画力、実践力などの学力を鍛えられるのではないかと思えたのです。早速、Squeakを取り入れた実践学習の企画書を提出したところ、運よく和田小学校へのパソコン配備が実現しました。 以後、全学年の授業にSqueakを活用した学習を取り入れ、5、6年生は年間50時間ほどの総合学習時間を当てるなど、全校挙げてプログラミング学習を実施してきました。そのチャンスを与えてくれた日本HPの惜しみない社会貢献や、根気良く指導してくれたHP-Squeakersの皆さんの協力にはとても感謝しています。

「プログラミング教育を過少評価する日本の現状は問題」

今、世界的にコンピュータ教育の必要性が叫ばれています。アラン・ケイ博士自身が世界中を飛び回っておられるのもそのためです。他国には満足な学校教育さえ受けられない子供たちも多い中、パソコンが普及している日本は恵まれた環境にあるといえますが、プログラミング教育が過少評価されている現状は極めて問題だと感じています。 知育、体育、食育、さらには徳育まで取り組まれているのに、コンピュータ教育が進んでいない。多くの学校はパソコンを設置するだけに留まっています。

Squeakはプログラムツールとしては特異かもしれませんが、これまでのどんな学習用プログラムより簡単で、情報教育のツールとしては非常に優れたものといえます。 アラン・ケイ博士も常に「(学習では)楽しむ気持ちが大切」と話されているように、自分で一生懸命組んだプログラムが思い通りに動いた時の楽しさは何物にも変え難いものです。子供たちにはそんなプログラミングの醍醐味を感じてほしいと心から願っています。

コンピュータのプログラミング能力を備えることは、現代を生き抜くための生活力を高めることにつながります。身近な家電製品もどんどん高度化し、全自動洗濯乾燥機などは既にプログラムの塊と化しています。あのような複雑な動きの仕組みを、Squeakで遊んでいる子供は理解できるのです。現代社会は、読み・書き・コンピュータといわれるように、コンピュータ能力を備えているか否かでは、今後の人生に大きな差を生み出すことでしょう。

「子供たちが作ったプログラムを見れば、その能力に驚き感動を覚える」

ただし、日本にはコンピュータ教育に関するカリキュラムがまだ乏しいのが現状です。一方、教育現場では、Squeakを教える方法が分からないという戸惑いもあります。 そのため、指導者が戸惑わないよう、45分内に完結する簡単なテーマでスタディモデルを用意するなど、基準となるガイドラインを用意することなどが不可欠となるでしょう。

また、保護者の皆さんには、ぜひプログラミング学習の大切さを理解していただきたいと思います。子供たちが作ったプログラムを見れば、その能力に驚き、皆感動を覚えるものです。Squeak教育がムダという保護者は、かつて一人もおられませんでした。

そして子供たちへは、何か一つにじっくり取り組むことが本当の力となると伝えたいと思います。Squeakはそれに応えられる道具だと断言できます。これから学ぶ子も、既に学んでいる子も決してあきらめないで、ぜひ高い目標を目指してコンピュータを学んでください。

(注釈)

*1:京都市教育委員会が、京都大学と政府出資特別法人京都ソフトアプリケーションと京都市立の小学校~高等学校までを対象にした「情報化社会」に対応できる人材を育成する活動

*2:1960年代に、数学者で発達心理学者のシーモア・パパート氏によって開発された、児童の思考能力向上の訓練を目的とするプログラミング言語

プロフィール / 横山 正さん

1947年東京生まれ。東京学芸大学大学院修士課程修了。同附属小金井小学校副校長を経て2007年3月まで東京都杉並区立和田小学校校長。
文部省達成度調査委員・指導資料作成協力者委員・学習指導要領作成協力者委員、東京書籍版の理科教科書の編集委員などを通して、日本の小学校理科学習の指針づくりに関わってきた。

編著書は多数。最近の主なものとして、情報教育関係では「情報・通信ネットワークを活用」(金の星社:単著)、環境教育関係では「木とわたしたちのくらし」(くもん出版:単著)、図鑑関係では小学館の図鑑NEO「動物」(小学館:協力)などがあり、2007年3月には、ポプラディア情報館「理科の実験・観察」の生物・地球・天体編と物質とエネルギー編の2巻の執筆・監修を行った。

現在は法務省人権擁護委員、(財)豊島修練会理事事業部長、成美教育文化会館副館長などの仕事の合間をみて、都内各小学校の研究・研修活動の支援に携わっている。昨年4月から隔週土曜日、朝日小学生新聞に「理科の目 子どもの目」というコラムを連載中。